フェイクレザーの価値とは?ステラマッカートニーに学ぶその価値観。
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こんにちは!Tommyです。
私は靴屋さんになる10年以上前、靴製造メーカーに合成皮革を販売する、資材屋さんでした。そこで当時の社長から毎日のようにこう教わったのです。
「革(天然皮革)は革以上のものにはならないが、合皮(合成皮革)は革以上になる可能性がある。」
それは、天然皮革より優れた素材などない!と信じて疑わなかった革信者である私の思想を揺るがす出来事でした。
当時は海外でこそ合成皮革の価値は認められていましたが、日本ではやはり「合皮はフェイク、粗悪、模倣品」などのイメージが払拭しきれていない状況だったと記憶しています。
果たして本当に合成皮革には、天然皮革以上の価値があるのでしょうか?
ここからはステラマッカートニーというブランドを例にとって見ていきましょう。
ステラマッカートニーのこだわり
ステラマッカートニー(Stella McCartney)は、名前でピンとくる人も多いと思いますが、あのイギリスの伝説的ロックバンド、ビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーの娘、ステラ・マッカートニーによって2001年に設立されたブランドです。
ブランド設立の2001年より、レザー、ファー、スキン(皮革)、フェザー(羽毛)、動物由来の接着剤(ニカワ)を一切使用しておらず、2010年にはPVC(ポリ塩化ビニル)の使用を完全禁止し、PVCフリーに。当初より動物愛護と環境保全をポリシーとして貫き通しています。
フェイクレザーやファーフリーファー、再生ナイロンなどの動物や環境に配慮された素材を使用することがブランドの強いこだわりなのです。
ここで注目したいのは「フェイクレザー」という言葉。サステナブルな取り組みが注目される現代では、「ヴィーガンレザー」、「エコレザー」という名称もよく耳にするようになりました。
フェイクレザーとヴィーガンレザー
フェイク(fake)とは、「偽の、いんちきの」といった意味を持ちます。一方ヴィーガン(vegan)とは「完全菜食主義者」という、動物由来の食品を口にせず、動物由来の革などの製品を避けて暮らす人々を意味しています。
つまりどちらも動物由来の原材料を使わずに作られた、人工的な皮革を意味する言葉であるようです。
今のところ、フェイクレザーとヴィーガンレザーに厳密な分類の定義はないようですが、おそらくはフェイクという言葉の持つネガティブなイメージを払拭するために、ヴィーガンレザーという言葉が使われ始めたのではないかと思います。
ここからは耳馴染みの良い、ヴィーガンレザーについてお話をしていきたいと思います。
合成皮革のヴィーガンレザー
以前のブログにも書きましたが、合成皮革とは、革のベースとなる基布(きふ)に織物や編物を使い、その上に樹脂を塗布して作られたものです。表面の樹脂層には型押し加工をして、本物の革のようなシワやシボの質感をつけます。 樹脂の種類には下記のようなものがあります。
- ポリ塩化ビニル(PVC)
- ポリウレタン(PU)
- リサイクルプラスチック
この中で、ステラマッカートニーが使用禁止にしたPVCについて軽く触れますと、可塑剤(かそざい:柔軟性や弾性を与えるために添加される物質の総称)を含むPVCは発がん性や生殖毒性など、人体に悪影響を及ぼすことが報告されています。全てのPVCが可塑剤を含むわけではないようです。
天然素材のヴィーガンレザー
合成皮革のほかに、植物などの天然素材から作られるものもあります。植物からとれる繊維やくずなどを樹脂と混ぜることで、ヴィーガンレザーを作ります。
- パイナップルの葉
- りんご
- サボテン
- ぶどう
- きのこ
- ココナッツ
これらのヴィーガンレザー製品は、天然のレザーよりも高価であることがあります。これは、持続可能な素材や製造プロセスのコストが高いためです。
フェイクだから安い、フェイクだから品質が悪い、というイメージはもはや過去のものであるという認識を持たなければなりません。
エコレザーとの違い
ここまでフェイクレザー、ヴィーガンレザーについてお話してまいりましたが、似たような言葉として「エコ(Eco)レザー」なるものを耳にしたことはありますか?
聞いただけだと、環境に配慮したヴィーガンレザーと同じようなイメージを持たれるかもしれませんが、エコレザーだけは定義が異なります。
エコレザーは、本革の切れ端を再利用した天然素材の革です。本革の製造工程で発生する、革の切れ端と天然素材の樹脂を混ぜて作られています。
「Eco」は「Ecology(環境・生態)」を意味しており、製造から輸送、販売、再利用までの全ての行程で環境負荷を減らし自然に影響が及ぼさないように行います。エコロジーなレザー、それがエコレザーなのです。
あなたは何に価値を見出しますか?
ヴィーガンレザーやエコレザーはあくまでも一例で、アパレル業界でも昨今注目を集めているSDGs(エスディージーズ)の取り組みについて、あなたはどのような思いを抱きますか?
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
外務省
私たちケミカルシューズ業界ももちろん例外ではなく、様々な商品が開発されています。環境に配慮した染色を施したり、天然由来成分の抗菌剤を付加したもの、天然の植物を原料に使用した合成皮革まで登場してきました。
これらは人工のものでありながら、天然皮革と同等、もしくはそれを上回る高価なものも存在します。靴メーカーはファッション性も考慮しながら、この新しい素材を取り入れたり、日々試行錯誤して消費者へ届ける努力をしています。
あなたは何を選び、何を使い、何に価値を見出しますか?
その考えの手助けになることができれば幸いです。
それでは今日は、この辺で!