天然皮革とは?「皮から革になるまで」を徹底解説します!
こんにちは!Tommyです。
以前より、「神戸はケミカルシューズの産地です。」という話をしてまいりました。
ケミカルシューズとは主に、アッパー材に合成皮革や布帛(ふはく)を用い、セメント式製法(アッパーと本底を糸で縫い付けずに、接着剤で貼り付ける製造方式)で作られたものを指します。
私は普段このケミカルシューズを販売をしている傍ら、天然皮革を使った革小物を手作りするという活動もしていて、天然皮革にも精通していたりします。
合成皮革には機能を付加することができるなど、様々な利点をお話してまいりましたが、今回は天然皮革のすばらしさも是非知って頂きたいと、以前に工場(タンナー)見学をした経験を踏まえて、詳しくお伝えします!
今回は靴のアッパー材に最もよく使われる、牛革についてフォーカスしていきたいと思いますが、天然皮革をつくるという行為は、「動物の命を頂く」という行為です。
多少生々しい画像も使用しますが、最後まで読み進めて頂けると嬉しいです!
天然皮革とは?皮と革の違い
天然皮革とは、動物の「皮」を鞣(なめ)して加工した「革」のことを指します。本革やリアルレザーと呼ばれることもあります。
「カワ」という文字をあえて使い分けており、私のブログの読者の皆さまには是非覚えて頂きたいのですが、
「カワ」とは、生の状態では「皮(skin)」、鞣されてはじめて「革(leather)」となり、明確に区別します。
そして、皮を革にするために「鞣す」という工程が存在します。
皮の鞣(なめ)し
革の原材料となる皮は、原皮(げんぴ)と呼ばれます。動物の皮を剥いだ後の生の皮に、防腐処理を施したものです。
原皮は、肉と同様に放置すると腐ってしまうため、塩漬けや乾燥などの処理をして保管されます。全ての原皮は鞣され、革になり、製品に使用されます。
牛革を作るために、牛の命が奪われているわけではありません。
鞣しの種類には大別して、次の3つの方法があります。
クロム鞣し
クロム鞣しとは、鉱物性鞣し剤の三価クロムを用いて鞣す方法です。クロム鞣しで完成した革をクロムレザーと呼びます。
後に説明するタンニン鞣しと比べて、
- しなやかで柔軟性に富む
- 耐熱温度が高い
- 様々な仕上げ、表情を作ることができる
- 短時間で大量に鞣すことができるので、最も生産量が多い
これらの特徴から、靴のアッパー材として多く使われています。
ただし、原料のクロムは重金属であり、環境負荷が高いこと、人によっては金属アレルギーを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
タンニン鞣し
一般に「渋(しぶ)」と言われるタンニンを、植物性鞣し剤として用いて鞣す方法です。現在ではミモザのタンニンを用いることが多いようです。タンニン鞣しは、
- 堅牢度の高い、ハードな仕上がり
- 染色しない状態は「素あげ革」「ヌメ革」「生成り」などと呼ばれ、自然の風合いが特徴
- 植物由来の原料であり、環境やアレルギー面で負荷が少ない
- 数ヶ月の時間や手間がかかるため、生産数が少ない
- 経年変化が楽しめる
堅牢な作りから、その多くは外底、中底用に使われてきました。
従来からの「ピット鞣し」は、濃度や成分の違うピット槽をいくつも用意しなくてはならず、皮の深層部まで自然にタンニンを浸透させるためには1カ月以上の月日が必要なのです。皮への負担は少ないため、上質なヌメ革が得られます。
一方、「タイコ鞣し」は、回転させることでタイコ内の突起物で皮を引っ掛け、繊維をほぐしながらタンニン液を浸透させるので時間の短縮が可能です。場所も取らないため比較的安価で提供できますが、皮への負担も大きいと言えます。
そのため、「ピット鞣し」でできるヌメ革を「本ヌメ革」と表現する場合もあります。
コンビ鞣し
「混合鞣し」とも呼ばれ、クロム鞣しとタンニン鞣しを組み合わせた鞣し方法です。
クロム鞣しによる環境問題と人体への影響が懸念され、クロムの含有量を極力減らし、タンニン主体で鞣す「ベジタブルレザー」がソフト化技術の改良と相まって使用されるようになりました。
クロムなめしによる「強く」「短期間」で出来るという特徴に、タンニンなめしのナチュラルな「風合い」「剛性」が合わさった革を作ることが可能になり、主にアッパー材として使用されています。
鞣しの工程
鞣しの工程は、「準備作業」、「鞣し作業」、「仕上げ作業」とに区分しています。今回はアッパー材に最もよく使われるクロム鞣しを中心に説明していきます。
(タンニン鞣しについても後日是非、ご説明させていただきたいと思います!)
準備作業
水漬け・裏打ち
皮をタイコ(ドラム)の中へ入れて回転させて、水洗い、肉面についている脂肪層と皮下層を取り除きます。
石灰漬け・脱毛
アルカリ性の作用により毛根を緩め皮を膨張させて、毛根の緩んだ皮を脱毛機にかけて脱毛します。
整理・脱灰(だっかい)
脱毛した皮に残っている毛を取り除いたり、もう一度裏打ちしたり、石灰および不要なタンパク質を取り除きます。
必要に応じてここで厚さを揃えるために漉(す)いたり、更に大判のものは縦に半裁(はんさい)にします。
ここまでの作業はクロム鞣しもタンニン鞣しも、順序はほぼ同じです。
鞣し作業(クロム鞣し)
漬酸(せきさん)・クロム鞣し
脱灰の終わった皮を水洗いしてから、クロム塩が皮の中に均一に浸透しやすいよう、回転するタイコ内で食塩と酸に浸します。
終了後クロム液をドラム内に加えて、クロムが皮のタンパク質と結合し、革になります。
裏漉き
中和が済んだ革の裏面をシェービングマシンで削って、もう一度厚さを均一にします。
染色・加脂
染色専用のタイコの中に革を入れ、回転させながら染色し、水溶性の油脂を加えます。
仕上げ作業
乾燥・ステーキング
革の裏面をサンドペーパーのついたロールですり取って、美しく仕上げます。
表面仕上げ
顔料仕上げをする革に下塗りをして下地を整え、下塗りの後、スプレーガンでムラなく仕上げ剤や光沢剤を吹き付け、表面を美しく仕上げます。
アイロン・プレス
回転する熱ロールで革表面にアイロンをかけ、シワのない美しい仕上げにします。プレス機で革の表面をプレスし、銀面(革の表面)の良く締まった製品に仕上げたり、必要な型押しを行い、蛇やワニなどのシボを付ける場合もあります。
これらの作業を経て、更には検査・軽量・梱包を終えた革は、革問屋、製造メーカーへと送り届けられるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?皮が革になるためには、途方もない労力と時間がかかります。今回はクロム鞣しを中心にお話しましたが、タンニン鞣しにもなると、労力、時間はさらに増すわけです。
天然皮革製品をさらに大切にしたい!という気持ちが芽生えてくださると幸いです!
それでは、また!